「真珠」ーそれは人魚が愛する人を想って流した涙のひとしずく。
満月の夜、人魚のメロがこぼした涙から「おさかな真珠」が生まれました。
色も形もそれぞれ違うおさかな真珠たちの輝きと、一つになったみんなの心は海のピンチを救う力になります。
さあ、海を舞台に人魚メロと王子様の愛が生み出す、小さな奇跡の物語の始まりです。
目次
プロローグ:王子様に恋をした人魚メロ

「おや、また泣いているの」
月が優しく問いかけます。 「ねえ、お月さま。どうして私には足がないのかしら」
満月が水面に光の道を作っている、静かな夜。
波一つない穏やかな海の真ん中で小さな人魚が一人、岩に座ってぽろぽろと涙をこぼしています。満月の光の中で水色の髪を輝かせ、哀しげなメロディーを小さく口ずさみながら。
「私にも足があれば王子様の元へ行けるのに。今頃あの方はどうしているのかしら」
「メロ。あなたには足の代わりに素晴らしいヒレがあるのよ。人間の世界よりずっと広くて自由な海で、美しいものに囲まれて暮らしているじゃない」
「私は色とりどりの珊瑚も星の砂もいらないわ。沈没船の宝石も。王子様のお側にいられれば、それだけで幸せだもの」
そう、人魚のメロは人間の王子様に恋をしているのでした。
青空が眩しいある夏の日、メロは王子様を乗せた船に出会いました。甲板で風に当たる王子様は銀色の髪を風になびかせ、照りつける太陽に目を細めながら水平線を見つめていました。
その姿の美しさといったら。風にひるがえるマントの裏地は鮮やかな赤で、それは王子様の凛々しさを一層引き立てていました。
そして、王子様は波間からこちらを見つめるメロに気がつくと、一瞬驚いた表情を浮かべ、手を胸に当てて笑顔で挨拶してくれたのです。
メロは思わず息を呑んで見とれ、いっぺんで王子様を好きになってしまったのでした。
おさかな真珠の誕生

「ああ、私はこの広い海の中で一人ぼっちなんだわ。足があれば、王子様と一緒にどこへでも行けるし、きっとたくさんのお友達もできるのに」
「仕方ないわね」
お月様はため息をついて言いました。
「ほらご覧なさい。あなたの涙から生まれる小さな輝きを。
海の底に落ちたあなたの涙はおさかな真珠の赤ちゃんになるのよ」
見るとメロのこぼした涙は満月の光を浴びて七色に輝きながら海に落ち、小さなヒレを持った真珠になってゆらゆらと泳いでいます。
「その子たちはおさかな真珠の赤ちゃんよ。大切に育ててあげてちょうだい。たくさんのお友達ときっと楽しく暮らせるわ」
海の底で始まる物語。ところが…

深い深い海の底。そこではメロの涙から生まれたおさかな真珠の赤ちゃんたちが毎日楽しく暮らしています。
メロはおさかな真珠たちのお話を聞いたり身だしなみのお世話をしたりと、叶わぬ恋の悲しさを忘れるほど忙しい毎日を送っています。
おさかな真珠の赤ちゃんたちはみんなそれぞれユニークな形をしており性格もさまざま。メロは「どの子も美しいわ」と言って可愛がりました。
そんなある日のこと。海の色が少しずつ変わり始めました。澄んだ水が濁り、海面には赤潮が。珊瑚はその美しい色を失い始め、おさかな真珠たちの光も鈍くなってゆきます。
「尾ひれが動かなくなってきちゃったよ」
ベタが顔をしかめて言いました。
「メロ。苦しいよ」
普段は気丈なマンタさえも弱音を吐きます。
メロは頭を抱えました。
「一体何が起きているのかしら」
命の輝きを失った海
陸では人々が汗を流しながら新しい港や工場を作っていました。
国を豊かにするために、皆が一生懸命です。
王子様は人々の先頭に立って新しい町の計画を進め、国中の人がこれから始まる新しい生活を楽しみにしていました。
でも、その結果海を汚していることには誰も目を向けなかったのです。
それを知ったメロは苦しみました。
「愛する王子様が頑張っていることを応援してあげたい。皆が豊かになるようにと考えて行動するなんて、やっぱり素晴らしいお方だわ。でも私たちは、私のおさかな真珠たちは、何もかも失っていく。どうしたらいいのかしら」
メロは涙を流します。でも濁った海の底に沈んでゆくそのその涙は、もう七色に輝くことも、命を生むこともなくなっていたのでした。
大きな嵐、そして王子様との再会
「メロ、大変だ!」
ある嵐の夜、散歩に出かけていたチョウチンアンコウが息せき切って戻ってくると言いました。
「おいらちょいと上の方まで行ってきたんだけど、王子様の船が嵐でひっくり返っててさ」
「なんですって!」
タコと一緒に髪飾りを作っていたメロは貝殻を投げ出して立ち上がりました。
「この光で照らして見たから間違いないよ」
チョウチンアンコウは頭の光を自慢気に振ります。
「すぐ行こう。大ピンチだし、チャンスだぜこれは」
メロは全速力で王子様の船へと向かいました。おさかな真珠たちも後に続きます。チョウチンアンコウが先頭で行き先を照らしながら船の方向を教えてくれます。
気を失って沈んでくる王子様を抱きかかえ、メロは島の入江へと向かいました。
島に近づくほど濁りが増していく海の中では満足に呼吸もできません。髪やヒレにはゴミが絡みついてきます。
ようやく入江にたどり着いて王子様を砂の上にそっと横たわらせると、メロは波打ち際に倒れ込みました。
「…君はいつかの人魚…?」
目を覚ました王子様はメロの姿を見ると驚いて言いました。
「なんてことだ。君が僕を助けてくれたんだね。あの日からずっと君のことが忘れられなくて…夢のようだよ。本当にありがとう」
王子様はメロの手を取ると優しく口付けをしました。
メロは胸がいっぱいになり、頷くのが精一杯です。
「おや、これは…?」
王子様はメロの髪をまじまじと見つめました。ゴミが絡みつき、輝きを失った水色の髪を。
メロは王子様に海で何が起きているかを話しました。王子様を大好きな気持ちと、自分たちの世界を大切に思う気持ちの狭間で苦しんでいることも。
「そうだったのか、知らなかった。僕たちの豊かさが君たちを傷つけていたなんて」
王子様の目から一粒の涙がこぼれ落ちました。もう一粒。もう一粒。
メロの涙と王子様の涙が海の中で一つになります。
おさかな真珠の魔法

するとどうでしょう。月の光の中で溶け合った二人の涙は海の底に落ち、七色の光を放ちました。海底からまばゆい光が溢れます。
それはおさかな真珠たちを再び輝かせる命の光でした。
「わ、体が軽いよ」
クリオネが小さな羽をばたつかせて飛び上がります。
「前みたいにすいすい泳げる!」
リュウグウノツカイは長い体をくねらせて喜んでいます。
輝きを取り戻したおさかな真珠たちは濁った海の中を照らし、傷ついた真珠貝や珊瑚に光を届けました。
それぞれが違う形をし、違う色で輝くおさかな真珠たち。その多様な色彩で海が彩られていく様子はまるで虹の魔法のようで、王子様とメロは息を呑んで見惚れました。
未来への約束

国に戻った王子様は、海を守るために働きはじめました。
学者たちを集めて海を汚さない方法で工事を進められるように計画し直し、船を出して海のゴミを集めさせました。豊かな海があるからこそ国が豊かになれることを人々に教えました。
王子様の努力のおかげで海は少しずつ美しさを取り戻し、メロとおさかな真珠たちにはまた平穏な日々が戻ってきたのでした。
王子様とメロはときどき、あの砂浜で長い時間を過ごします。おさかな真珠たちも王子様とすっかり仲良しになり、イソギンチャクなどは王子様のお守りジュエリーとして地上で過ごすようになったほどです。
「イソギンチャクが僕のところに来てくれたから、いつでもメロのことを感じられるよ」と、王子様も喜んでいます。
海と陸は違う世界。けれど、確かなつながりで支え合っています。メロと王子様のように。そして今も、真珠の光は人々の幸せと海の静かな願いを映しているのです。
おさかな真珠はこちら▶︎https://erisvelina.jp/collections/fishpearl
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