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真珠とは一体どんな宝石なのでしょうか?
今回の記事では、私たち日本人にとって最も身近な宝石である真珠について詳しく解説します。真珠の宝石としての特徴や、真珠の名前の由来や歴史、真珠にまつわる伝承などを紹介します。「真珠とは一体どんな宝石なのか?」と興味を持った方は、ぜひご一読ください。
真珠とはどんな宝石?真珠の特色を紹介
神秘的で上品な輝きを持つ真珠は、フォーマルからデイリーまで幅広いシーンで活躍する人気の宝石です。
ある程度の年齢の女性なら何かしら一つは真珠のジュエリーを持っていると言っても過言ではないほど、真珠は私たち日本人にとって最も馴染みの深い宝石でしょう。
しかし真珠と一口に言ってもいろいろな種類があり、中には真珠に似せて作られたイミテーションパールも多く出回っています。真珠とは一体どんな宝石なのか、何を持って真珠と呼ぶのか、実はよく分からないという方も多いかもしれません。ここからは、真珠の特徴について解説します。
真珠は貝が育む有機質宝石
真珠は海、川、湖などに棲む貝の体内で形成される生体鉱物(バイオミネラル)です。真珠の成分のうち、約95%は貝殻の成分と同じ炭酸カルシウムです。残りの約5%は貝から分泌される有機成分で、コンキオリンという17種類のアミノ酸からなるタンパク質が含まれています。
ダイヤモンドやエメラルドなどの宝石の多くは鉱物ですが、真珠は生物の遺骸や生物に起因して生成された物質からできた有機質宝石です。真珠以外の有機質宝石には、珊瑚(さんご)、琥珀(こはく)、象牙(ぞうげ)、鼈甲(べっこう)などがあります。
貝が育む宝石として養殖が可能であり、鉱物のように自然のなかから採取しない真珠は壊死かるジュエリーとしても注目を集めている宝石です。
エシカルジュエリーとしての真珠については以下の記事でも紹介しています。
▶【エシカルパール】エシカル消費の側面から考えるSDGsな「パールジュエリー」の魅力とは
真珠の定義とは?
一般社団法人日本真珠振興会では、真珠の定義を以下のように記しています。
【真珠とは、以下に⽰す5つの指標で定義される】
- 真珠層を有する生きた貝の体内で
- 真珠袋(パールサック)が構築され
- その袋内で形成される生鉱物であり
- その表面全体が母貝貝殻の真珠層(「アラゴナイト」と呼ばれる炭酸カルシウムの結晶と、「コンキオリン」と呼ばれる有機基質の積層構造)と等質の層で覆われており
- 宝石的価値を有するもの。
母貝の種類や天然・養殖は関係なく、以上の5つの条件を満たしたものが真珠とみなされます。流通している真珠のなかには、上記の条件を満たさない偽物の真珠も少なくありません。
真珠の見分け方については以下の記事でも紹介しています。
▶真珠の本物か偽物かの見分け方とは?人工真珠を見分ける「6つのポイント」を紹介
真珠は種類が豊富
真珠には、母貝の種類によってサイズ・色・輝き・形などが大きく異なり、それぞれに独特の美しさがあります。また、自然の中で偶然に作られる天然真珠と、養殖場で育てられている母貝の中に核を人工的に埋め込んで作られる養殖真珠にも分けられます。
現在、市場に流通している真珠の大半は養殖真珠ですが、その中でアコヤ真珠・白蝶真珠・黒蝶真珠・淡水真珠の4種類が、「養殖真珠の4大種類」と呼ばれています。
また、真珠は養殖真珠の4大種類以外にもホタテや牡蠣、アワビなどさまざまな貝から採れることは、あまり知られていません。
ホタテやその他の貝から採れる真珠については以下の記事でも紹介しています。
▶ホタテから真珠がとれる?スキャロップパールがとれる理由や確率、真珠を作る貝10種を紹介
真珠は価値基準が複雑
貝から育まれる真珠は一粒一粒に個性があり、サイズ・巻き・キズ・テリ(光沢)・色など、さまざまな要素が複雑に合わさって真珠独特の美しさが形成されます。
特に真珠の美しさを大きく左右するのはテリと巻きで、真珠層の厚みや緻密さによって内側から光るような真珠特有の奥深い輝きが生まれます。
ダイヤモンドの4Cのような絶対的な数値で評価できるものではなく、真珠の品質を見極めるには長年の経験を積んだ熟練の目が不可欠です。そのため、真珠は他の宝石よりも評価するのが難しいと言われています。
時代と共に需要に変化が見られ、価値が上がった真珠の代表的なものが「バロック真珠」です。本来、新円であることが高く評価されていた真珠ですが、歪んだものにも「唯一無二」という評価がつき、需要が高まっています。
真珠の色やテリ、希少性、巻きなどについては以下の記事でも紹介しています。
▶真珠の色はなぜ違う?真珠の干渉色や実体色、テリ・巻きとの関係、色が長持ちするお手入れまで徹底解説
▶︎ナチュラルブルーのアコヤ真珠を徹底解説|希少価値の高い青色のアコヤ真珠の魅力とは?
▶︎おさかな真珠とは?廃棄されていた「鬼バロック真珠」がサスティナブルなジュエリーに大変身
真珠の名の由来とは?
真珠は英語ではパール、和名では和珠と呼ばれています。ここからは、西洋と東洋での真珠の名称の語源や由来について解説します。
パールの語源はラテン語の「perla(ピルラ)」
真珠は英語では「Pearl(パール)」と呼ばれていますが、この語源はラテン語で西洋梨を意味する「Perla(ピルラ)」だと言われています。これは、天然真珠の形が西洋梨の形に似ていることに由来しています。
古代ギリシアでは、真珠のことを「Maragarites(マルガリテス)」と呼んでいたそうです。これは「光の子」という意味で、母貝から生まれる光り輝く真珠の粒を見て「光の子供」と連想したからでしょう。
和名は「真珠」「和珠」
日本語での名称はお馴染みの「真珠」で、「和珠」と呼ばれることもあります。
珠とは河や海で採れるきれいな円形の玉という意味があり、玉石なども含まれます。このことから、貝から採れた特に輝きが美しいものを真珠と呼ぶようになりました。「和珠」は、真珠の中でも「日本産の真珠」という意味を持っています。
世界における真珠の歴史とは?
真珠はいつ頃から人々に愛されてきたのでしょうか?世界各地で「月の雫」「光の子」「人魚の涙」などと呼ばれ、古くから多くの人達を魅了してきた真珠の歴史について紹介します。
天然真珠は世界最古の宝石
自然の海や湖で育った貝の中から、極まれに発見される美しい真珠は、人類が手にした世界最古の宝石と言われています。
現在確認されている世界最古の真珠は、アラブ首長国連邦のアブダビ沖の島から発見された天然真珠と言われています。紀元前5,800年から5,600年の新石器時代の遺跡から発見されたもので、今から約7,600年以上前の真珠だそうです。
日本で発見されている最古の天然真珠は、福井県鳥浜貝塚から出土した『トリハマ・パール』です。この貝塚は今から約5500年前の縄文時代のもので、真珠と日本人の関わりは縄文時代まで遡ります。
真珠の産地はもともとオリエント中心
コロンブスによる新世界発見までの真珠の産地は、アラビア湾や南インドのマンナール湾などのオリエントが中心でした。13世紀に書かれたマルコポーロの東方見聞録では、日本は黄金の国と紹介されたことが知られていますが、真珠についても「バラ色をした丸い大型の美しい真珠が多量に産出する」とも書かれていました。
ヨーロッパの「真珠の時代」
15世紀に新大陸への航海が始まると、ベネズエラやパナマの海域に新たに天然真珠の産地が発見されました。南米で良質の真珠が多く採れるようになったことから、王侯貴族を中心にヨーロッパでの真珠需要が高まりました。
15世紀から17世紀のルネッサンス期はバールエージ(真珠時代)とも呼ばれており、エリザベス1世を描いた『アルマダの肖像画』やフェルメールの名作『真珠の耳飾りの少女』など、この時代の西洋画の多くに真珠のジュエリーが描かれています。
真珠の歴史については以下の記事でも紹介しています。
▶【真珠の歴史を解き明かす】東洋・西洋の文化を辿る真珠の魅力と養殖技術の進化とは
日本における養殖真珠の歴史とは?
縄文時代の貝塚から真珠が発見されているように、日本でも古代から真珠が大切にされてきました。古代の日本はアコヤ真珠の一大産地でもあり、中国への朝貢品として真珠が輸出されていました。中国の魏志倭人伝や後漢書にも日本の真珠に関する記述が残されています。
日本人にとって真珠は古代より最も身近な宝石ではありましたが、天然の真珠で宝石として使えるものは極めて稀少で、貴重なものでした。そのため天皇や貴族など位の高い人々の装身具や仏具などに使われていました。
養殖真珠の始まりは明治時代
自然に生息する貝が体内に侵入した異物から身を守るために偶然にできる天然真珠は、稀少価値が高く高値で取引されていたため乱獲が続いていました。そのため、1800年代後半頃には絶滅の危機に瀕していたそうです。
1888年に三重県志摩地方出身の商人・御木本幸吉氏が三重県の多徳島でアコヤ貝の養殖に着手し、1893年には世界で初めて半円真珠の養殖に成功しました。ここから世界の養殖真珠の歴史が始まりました。
日本の真珠養殖技術が確立
半円真珠の養殖に成功した御木本氏は、1896年に半円殻つき真珠養殖の特許権「真珠素質被着法」を取得し、1899年には養殖真珠ブランド『MIKIKMOTO』を設立しました。
1907年には西川藤吉氏が真円・真球形の真珠養殖技術に成功。西川氏が考案した「ピース式」とは、外套膜の切片と球形の核を貝の生殖巣に埋め込む「核入れ手術」を行うという方法で、現在でも世界の真珠養殖で実践されている方法です。
1890年代から1920年代にかけて、日本の養殖技術をもとに日本や世界で黒蝶貝、マベ貝、白蝶貝、淡水真珠などの養殖も開始され、アコヤ真珠以外の真珠の生成も行われるようになりました。
日本産の養殖アコヤ真珠が世界を魅了
明治期に真珠の養殖技術が確立されてから、日本は世界トップクラスの真珠生産国として君臨しています。日本におけるアコヤ真珠の三大産地は、三重県の伊勢志摩、愛媛県の宇和島、長崎県の対馬・壱岐の3カ所。
四季のある日本の気候、波の穏やかなリアス式海岸、そして高い真珠養殖技術により育まれる日本産アコヤ真珠は、世界で最も美しい真珠と称されています。
日本の真珠養殖の歴史については以下の記事でも紹介しています。
▶【真珠の産地】日本の三大産地の養殖の歴史や真珠の特徴、世界の真珠産地まで徹底解説
世界に伝わる真珠の伝説や伝承とは?
海や湖から採取される貝から極まれに見つかる真珠には自然の神秘や生命の力が感じられ、古代から人々を魅了してきました。何千年もの間、富や力のシンボルとして人々に大切にされてきた真珠は、世界各地の伝説や伝承にも登場します。ここからは真珠にまつわる伝説や伝承を紹介します。
幻想的な輝きを持つ『月の雫』
古代ギリシャや古代ローマでは、貝の中から偶然出てきた真珠の美しさに驚き、真珠を『月の雫』と称えたという話が残されています。
古代ローマの博物誌には、「月夜に浮かび上がった貝が開き、天から舞い降りた霧を吸い込んで育てたのが真珠である」という記述が残されています。
ギリシャ神話に登場する愛と美の女神アフロディーテは、海から誕生したという伝えられていますが、アフロディーテが誕生した時にその美しい裸体から光り輝く雫が海に落ち、その水滴が真珠になったとも言われています。
真珠は、アフロディーテのアトリビュート(神話に登場する神と関連つけられた持ち物のこと)のひとつです。
悲しみの象徴である『人魚の涙』
人魚に関する民間伝承も、ヨーロッパ、アジア、アフリカなど世界各地に残されています。人魚姫の伝説では、「人間に叶わぬ恋をした人魚が、恋人を想って流した涙が波にはじけて宝石となった」と言われており、真珠は『人魚の涙』とも呼ばれるようになりました。
このことから、真珠は悲しみを象徴する宝石とされ、故人に対する哀悼の意味を込めて葬儀で真珠を身に着ける習慣が定着したと言われています。
真珠をもつ意味については以下の記事でも紹介しています。
▶真珠が持つ意味とは?冠婚葬祭・嫁入り道具・厄除けにぴったりなパールネックレスを徹底解説!
真珠の奥深さを知ることでさらに楽しめる『ERIS VELINA』のパールジュエリー
世界各地で人々に愛されてきた真珠ですが、日本は古代から現代まで真珠の歴史に大きく関わってきました。私たち日本人にとって真珠は最も身近な宝石ですが、改めて真珠の歴史や真珠にまつわる伝承を知ることで、真珠の奥深さや宝石としての魅力を再発見できるでしょう。
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