真珠のジュエリーを身に着けたイタリア王妃マルゲリータ

【真珠の歴史を解き明かす】東洋・西洋の文化を辿る真珠の魅力と養殖技術の進化とは

目次

真珠は古くから宝石の女王と呼ばれ、人々の憧憬の対象でした。 その美しさは、騎士や女王も魅了したといわれています。

日本は特に質の高い真珠の産地として知られており、世界中の女性たちに愛されてきました。 優雅で女性的な真珠には、どんな歴史があるのでしょうか。 真珠の種類も含めて、その歴史と魅力に迫ってみましょう。

(※上記画像:豪奢な真珠のジュエリーを身に着けたイタリア王妃マルゲリータ。「マルゲリータ」という名前も真珠にちなんだものです。)

 真珠については、以下の記事でも詳しく紹介しています。ぜひ、参考にしてみてください。

【真珠とは?】宝石としての真珠の定義や名前の由来、真珠養殖の歴史、世界に伝わる伝説を紹介

東洋における真珠の歴史

仏像真珠

日本ではフォーマルなシーンに不可欠とされている真珠。 いったいいつ頃から真珠が愛されてきたのでしょうか。 アジアにおける歴史とともに、真珠にまつわる逸話をご紹介します。

 

中国の伝説や仏教にも登場する真珠

中国における真珠はどうでしょうか。中国では、真珠は「人魚の涙」であるとする伝承や、空で戦う竜の口からこぼれたなんていうロマンあふれる伝説が残っています。

また仏教においても、真珠は極楽浄土を飾る七宝のひとつという解釈が存在します。その解釈を反映して、仏教真珠というものが存在しました。

仏像真珠は、淡水の真珠貝を使った初期の養殖真珠です。殻に仏像の形の核を張り、仏像が浮き上がるような真珠層を作る方法でした

大変高貴かつ高価なものとして、珍重されていました。 古代の東洋では、真珠は神秘的な力を秘めたパワーストーンといった扱いをされていたわけですね。

 現代でも真珠はパワーストーンとして持たれることがあり、さまざまな意味を持つ宝石として愛されています。

真珠を持つ意味については、以下の記事でも紹介しています。

真珠が持つ意味とは?冠婚葬祭・嫁入り道具・厄除けにぴったりなパールネックレスを徹底解説!

卑弥呼も真珠を持っていた?

日本の古代といえば、邪馬台国と女王卑弥呼が思い浮かびます。 実はこの卑弥呼も、真珠を所有していたと伝えられているのです。 当時の日本ではすでに真珠を採っていたほか、大陸との交流の贈り物として、貴重な真珠が友好の証として取り交わされていたそうです。

また女傑として知られる神功皇后も、竜宮から真珠を得たという伝説があり、 奈良時代の歴史的遺産である正倉院の宝冠や刀にも、真珠の装飾が残されています。

  

西洋における真珠の歴史

西洋における真珠の歴史

(※画像:若き日の英国女王エリザベス1世も真珠の愛好者)

ヨーロッパの貴婦人たちには、ことのほか真珠が似合うイメージがあります。実際に、西洋では真珠は大変愛された宝石のひとつでした。 そして西洋でも、真珠の歴史は古代にまでさかのぼります。 その素敵な歴史のエピソードを見てみましょう。

 

クレオパトラも愛した真珠

世界史を変えたといわれる古代の美女クレオパトラ。 英雄たちに愛された彼女は、真珠を愛した女王として知られています。

東洋の宝石とされていた真珠が西洋にもたらされたのは、アレクサンダー大王による東征がきっかけでした。 古代ローマ時代の博物誌には、真珠は月や天界と関係を持つ神秘的な宝石と記されています。

ギリシア語で「マルガリタ」と呼ばれた真珠は西洋社会に深く根付き、真珠を意味する「マーガレット」(英語)や「マルガレーテ」(ドイツ語)といった女性の名前がロングセラーとなっているほどです。

 

真珠は魔除け?古代から続く人気

中世のヨーロッパでは、真珠は装飾品であると同時に魔除けとして珍重されていました。 女性的なイメージのある真珠ですが、魔や危険を遠ざけるパワーストーンとして、騎士たちもお守りがわりに携帯していたといわれています。

またキリスト教の宗教画にも真珠は数多く描かれましたが、これは聖書に「天国の門は真珠でできている」という記述があることに由来します。 16世紀に入ると、ヨーロッパはバールエージと呼ばれる時代を迎え、王侯貴族の装身具としての真珠の価値が高まりました。

ロマン主義の時代には、真珠は天使や妖精、あるいは愛する人の涙などという解釈も生まれます。神秘性だけではなくロマンチックなアイテムとして、さらに人気を得るようになったのです。

18世紀は真珠の産出量が減ったため、真珠はダイヤモンドに勝るとも劣らない、宝石界の花形でした。

 

真珠の価値はさまざまなシンボルに

真珠の価値

(※画像:日本でも有名なフェルメールの名作『真珠の耳飾りの少女』)

神の創造物として崇められてきた真珠は、さまざまなシンボルとしてアートの世界にも描かれています。素敵な作品とともに、その意味を探ってみましょう。

 

真珠は6月の誕生石

西洋社会では真珠は神の創造物であるという考えから、「清廉」や「高潔」「謙虚」という意味があります。 古代ギリシアでは、愛と結婚のエンブレムでもありました。こうしたポジティブな事象のシンボルであることから、特に女性に愛される宝石として定着したのです。

真珠は6月の誕生石。ジューンブライドと呼ばれて結婚式が多い6月、美しい意味を持つ真珠は誕生石としてふさわしいですね。

 

アートの中の真珠

アートの中の真珠

(※画像:ルネサンスの名作『ヴィーナスの誕生』。ヴィーナスは真珠の化身として描かれています 真珠は絵画にも見ることができます。)

いずれも女性たちを美しく品格ある姿に描くための、重要なアイテムになっています。 また名作として有名なボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』は、美しいヴィーナス自身が真珠の化身として描かれています。

 

真珠の色が意味するものは?

真珠にはさまざまな色があります。 西洋では、真珠のそれぞれの色にも意味があるとされているのです。

  • 白(純粋さ・婚約・結婚)
  • 黒(洗練・富・パワー)
  • ピンク(女性らしさ・幸福な恋愛)
  • 黄色(明朗さ・喜び・新たな始まり)
  • ブルー(誠実・信頼・空と海)

 真珠の色については以下の記事でも紹介しています。

真珠の色はなぜ違う?真珠の干渉色や実体色、テリ・巻きとの関係、色が長持ちするお手入れまで徹底解説

真珠の種類と真珠養殖の変遷

真珠の種類

西洋では「真珠は東洋のもの」という概念が存在します。 日本はまさにその言い伝えに恥じないほど、世界に冠たる真珠王国。

美しい光沢を持つ日本の真珠は、世界の女性たちの憧れの的です。 現在日本で生産される真珠には、どんな種類があるのでしょうか。 真珠養殖の変遷とともにお伝えします。

 

真珠の種類

真珠は、天然真珠と養殖真珠に大別されます。

 

天然真珠

貝類に自然に生じた真珠の総称です。 形状はさまざまで、球形のものは多くありません。

 

養殖真珠

人為的に貝類に発生させた真珠を指します。 アコヤガイ、シロチョウガイ、クロチョウガイ、マベガイなどが養殖に用いられています。 日本ではアコヤガイを用いた養殖真珠が盛んです。

日本の養殖真珠の歴史は、19世紀終わりごろから始まりました。1905年に真円のタイプの生産に成功、明治天皇に献上されたそうです。 その後の発展は著しく、日本の真珠は世界で最も高い評価を得るにいたります。

 

アコヤ・シロチョウ・クロチョウ、その違いは?

真珠を養殖するための貝には、いくつかの種類があります。 それぞれの特徴をご紹介しましょう。

 

アコヤ真珠

シンジュガイとも呼ばれる養殖真珠の母貝です。 真円の真珠を作り出すことができ、日本の養殖真珠の母貝としては主流となっています。 まだ養殖真珠が存在しなかったころから、アコヤガイは天然真珠の王者と呼ばれていました。

しかしアコヤガイは生息できる条件が厳しく、昭和の初めごろまでは日本の固有種と考えられていたのです。 19世紀の終わり、御木本幸吉がアコヤガイにガラスなどの核を入れて養殖を試みたのを皮切りに、日本のアコヤガイによる真珠養殖が始まりました。

1907年、アコヤガイによる真円の真珠を生産する特許が申請され、その後もさまざまな技術によってアコヤ真珠の生産量は高まりました。 光沢や丸み、色調が美しく、不動の人気を誇っています。

 

シロチョウ真珠

シロチョウガイは世界最大の真珠貝で、大粒の真珠を作ることで知られています。かつては南洋真珠と呼ばれていました。 シロチョウガイの真珠層はとても熱くなめらかで、美しい銀白色はことのほか愛されました。

真珠がジュエリーとなるだけではなく、貝そのものが螺鈿細工などの工芸品に用いられてきました。 シロチョウガイは生息する数がとても少なく、その昔はダイバーが海底のシロチョウガイを採取して養殖真珠を作っていたという逸話があります。

資源枯渇が懸念される中、現在は人工採苗技術が進行中です。 また1980年頃には、シロチョウガイの周縁部分が金色になっているタイプを選抜して、ゴールデンパールが生まれています。

 

クロチョウ真珠

鹿児島や沖縄、タヒチで養殖が盛んなクロチョウガイ。 15世紀の大航海時代、スペイン人がメキシコで発見したクロチョウ真珠をヨーロッパに持ち帰ったのが起源となり、脚光を浴びるようになりました。

英国王エリザベス1世のパナマクロチョウ真珠や、スペインのフェリペ2世に献上され最終的には女優のエリザベス・テーラーが所有したドロップ型の「ラ・ペレグリーナ」は、歴史に残るクロチョウ真珠です。

クロチョウガイの分布は極めて広いものの、真珠を生み出す割合は非常に低かったといわれています。1976年に出版された『黒真珠物語』によれば、クロチョウガイから真珠が生まれる確率は40万個に1個であったと伝えられています。

クロチョウガイはアコヤガイと同じくウグイスガイ科に属していますが、できる真珠はアコヤ真珠よりも大きめであることが多く、形はバロックと呼ばれるいびつなものが主流で、ドロップ型は非常にもてはやされました。

現在は日本の支援によるタヒチでの養殖が盛んで、現在も全体の90%以上がタヒチで生産されています。

 ここで紹介している以外の貝から採れる真珠については以下の記事で紹介しています。

ホタテから真珠がとれる?スキャロップパールがとれる理由や確率、真珠を作る貝10種を紹介

数十か国に輸出される日本の真珠

日本産の真珠は、世界中で需要が非常に高いことをご存じでしょうか。 日本ではフォーマルシーンで身に着けることが多いため、国内向けが大半というイメージを持つ方も多いかもしれません。

実は日本の真珠はアメリカやヨーロッパ、アジアに輸出されるものが多く、まさに世界中から渇仰されているといっても過言ではないでしょう。

特に神戸からの輸出量は全体の70%を占めます。 つまり神戸は、良質な真珠のメッカであるというわけですね。

 日本の養殖真珠の産地や歴史については、以下の記事でも紹介しています。

【真珠の産地】日本の三大産地の養殖の歴史や真珠の特徴、世界の真珠産地まで徹底解説

真珠の美はすべての女性のために

真珠ラ・ペレグリーナを身に着ける女王メアリー1世

(※画像:歴史に残る真珠ラ・ペレグリーナを身に着ける女王メアリー1世)

古来、女性たちを美しく飾ってきた真珠。 西洋では、東洋に起源を持つ神秘的な宝石として、王侯貴族に愛されてきました。

魔除けやお守りの意味を持ち、幸福や愛へと導いてくれる真珠のパワー。その気品と美しさも相まって、真珠はやがて養殖技術を生むにいたりました。

現在は女性たちの気品を演出するジュエリーとして、広く普及しているのです。

 

真珠で気品をまとう

ERIS VELINAの真珠

お守りとして、女性たちを美しく彩るジュエリーとして、数世紀を超えて輝き続けた真珠。 エリスヴェリーナは、そんな伝統を受け継いだ選りすぐりの真珠が主役です。

エリスヴェリーナでは、多彩な色の真珠を揃えております。フォーマルシーンだけではなく、カジュアルスタイルにも合わせることができるあなただけの真珠を、エリスヴェリーナでお楽しみください。

 

<参考文献>

  • 一般社団法人 日本真珠振興会「真珠指針2020」
  • 山田篤美著『真珠の世界史』2013年,中央公論社刊
  • 小学館日本大百科全書 ・平凡社世界大百科事典

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